研究概要 |
私は臨床用磁気共鳴画像装置を用いてプロトン磁気共鳴スペクトル画像法(MRSI)の実用化を行ってきた。この測定法にて多くの臨床データを収集してきたが、この測定法における問題点のひとつは、他の画像法の測定時間が短縮されつつあるにもかかわらず、測定時間が長いことである。時間短縮の利点は、臨床患者のデータ収集が容易になるばかりでなく、内在性代謝物のダイナミックスが測定可能となり、脳機能代謝の研究に多大な貢献をし得る。これを解決するため、今回超高速磁気共鳴スペクトル画像法を立案した。当初予定した当施設で保有する動物実験用MR装置による実験は、実際の有効な測定には多くの調整項目が残されて実際の測定にはいたらず、本年はこの装置でエコープレーナー(EPI)-MRSIを稼働させるためのノウハウの蓄積を行った。このため、臨床用MR装置(1.5T,MEGNETOM)による測定方法の改善を図った。今回、測定の高速化を図るためEPI法・グラディエントエコー(GRE)法・ファストスピンエコー(FSE)法を応用した測定法を立案した。このうち、EPI法による測定は傾斜磁場の発生が不十分で、本年は実用にいたらず、次年度の研究に持ち越した。GRE法・FSE法での測定は可能となった。GRE法では頭蓋に近い測定領域での測定に安定性の問題があるが、短いエコータイムでの測定が容易で信号強度は確保できた。FSE法では方法として十分可能であるが、測定物質の緩和時間が十分に長い必要がある。すべての脳内代謝物の測定にはk空間の配置を変更する必要があることが判明した。このソフトウェアーの開発は次年度の研究に持ち越した。脳神経疾患に対する適応は、グラディエントエコー法と部位選択的に飽和パルスを照射する方法による組み合わせで脳代謝異常を測定することができた。これらの研究から、次年度にこれらを実用化し、応用していく目処が得られた。
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