悪性腫瘍に対するモノクローナル抗体を放射線同位元素(RI)で標識してイメージングや治療を行う試みが現在まで数多くなされているが、RI標識抗体が血中プールや正常組織に留まり病変と正常組織のRI集積比(腫瘍/正常組織比)が不十分であることが問題であった。これを解決するためにpretargetingあるいは2ステップの方法が考案された。癌関連抗原およびハプテンの両方に特異性のあるBispecific Antibody(BsAb)を投与して病変に集積させたのち、RI標識ハプテンを投与する。大腸癌細胞株をヌードマウスの皮下移植し継代した。2ステップ法のBsAbとして抗CEA/抗DTPA抗体F6-743を用いた。さらに1ステップ法として抗CEA抗体F6のF(ab')2を用いた。BsAbをヌードマウスの尾静脈から投与した。48時間後、I-125標識DTPAハプテンを投与し、経時的に屠殺し放射能の体内分布を調べた。またI-125標識F6F(ab')2も体内分布を調べた。これらのデータをもとに腫瘍および正常組織の吸収線量を求めた。マウスにおける体内分布で2ステップ法では、I-125標識F6F(ab')2を用いる1ステップ法と同等の腫瘍集積が認められた。正常組織からの洗い出しは2ステップ法が有意に速かった。吸収線量の腫瘍/正常組織比(therapeutic index)は1ステップ法で腫瘍/骨髄比が6.8、腫瘍/肝比が8.2であり、2ステップ法で43、11.7であった。今回の検討で2ステップ法にて1ステップ法よりも高い腫瘍/正常組織比を得ることができた。今回得られたtherapeutic indexは正常組織の被曝を迎えらながら腫瘍に治療量の内部放射線照射を行えることも示しており、放射性免疫治療へ応用できると考えられる。
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