1.P糖蛋白質の発現のないKB3-1細胞とこの細胞にmdrgeneをトランスフェクトしてP糖蛋白質を発現させたKB-G2細胞を用いて、MTTassay法でそれぞれのdoxorubicin感受性を測定した。KB-G2細胞の方がKB3-1細胞よりも10倍以上の濃度に耐性であった。 2.それぞれの細胞をヌードマウスに移植し、Tc-99mMIBIを静注し、腫瘍への集積の経時的変化を測定した。腫瘍への集積は静注後1時間では、KB3-1が0.99±0.35%ID/g、KB-G2が0.40±0.12%ID/gであり、KB3-1細胞の方が強い集積を示した。また、静注後10分〜1時間の洗い出し率はKB3-1細胞で0.0062±0.0027/min、KB-G2細胞で0.0143±0.0060/minとなり、KB-G2腫瘍の方がTc-99mMIBIの洗い出し率は大きかった。 3.同意の得られた乳癌患者15例において、Tc-99mMIBIシンチグラフィを施行した。早期像と後期像での腫瘍部へのTc-99mMIBIの集積強度およびTc-99mMIBIの洗い出しの指標であるretention indexを算出し、手術時に摘出された乳癌組織のMTTアッセイ法で測定した抗癌剤感受性との相関関係を求めた。乳癌の化学療法の中心となるdoxorubicinに関しては、早期像や後期像の一時点でのTc-99mMIBIの集積強度と抗癌剤感受性の指標となるinhibiton ratioとの間には、明らかな相関関係は確認できなかったが、retention indexとinhibiton ratioとの間には強い相関関係が認められた(r=0.75)。このため、組織型にばらつきのある人の乳癌では、投与後の一時点でのTc-99mMIBIの集積強度よりも、腫瘍からのTc-99mMIBIの洗い出しを観察した方が、乳癌の抗癌剤感受性を予測するのに役立つことが示された。
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