本研究は、腫瘍を取り巻く微少環境の生理修飾に注目して放射線によるアポトーシス誘導を増強し、さらに低酸素細胞放射線増感剤活性を持つ新しい増感剤による放射線治療システムの開発と放射線・温熱・化学複合両方における応用について研究することを目的とした。マウス大腿皮下に移植したMM46乳癌腫瘍に対し、局所放射線療法あるいは局所温熱療法を行うに際し、3-nitrotriazo lederivativeの一種AK-2123を前投与すると、AK-2123は放射線増感および温熱増感することが確認された。さらにマウス扁平上皮癌株SCCVII脳腫を用い検討したところ、同様に放射線増感効果を認めた。また化学療法剤の代表である、マイトマイシンC、シスプラチン、あるいはアドリアマイシンを併用した放射線温熱化学複合療法においてAK-2123は増感効果を認めることを確認した。特にシスプラチンおよびマイトマイシンCとの併用効果が高く認められた。また各処理マウスの腫瘍および正常組織における血流量を86Rb extraction techniqueにより検討したところAK-2123の投与により腫瘍組織特異的な血流量の減少が観察され、特に温熱処理の併用により強く観察された。これらの成果についてインドで開催された、Symposium on Hyperthermia & Radiomodifiersにおいて発表した。ここまでの結果を踏まえ、次年度はこれら治療時の腫瘍細胞致死におけるアポトーシスの関与について組織学的な検討を継続する予定である。
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