本研究は、腫瘍を取り巻く微小環境の生理修飾に注目して放射線によるアポトーシス誘導を増強し、さらに低酸素細胞放射線増感剤活性を持つ新しい増感剤による放射線治療システムの開発と放射線・温熱・化学複合療法における応用について研究することを目的とした。マウス大腿皮下に移植したSCCVII腫瘍を用い放射線増感剤の3-nitrotriazolederivativeの一種AK-2123を前投与すると、AK-2123は放射線増感および温熱増感することを確認した。さらに放射線温熱化学複合療法としてマイトマイシンC、シスプラチン、あるいはアドリアマイシンを併用した場合にもAK-2123は増感効果を認めることを確認した。特にシスプラチンおよびマイトマイシンCとの併用効果が高く認められた。また各処理マウスの腫瘍および正常組織における血流量を検討したところAK-2123の投与により腫瘍組織特異的な血流量の減少が観察され、特に温熱処理の併用により強く観察された。したがってこれら複合療法においては癌組織が低酸素・酸性環境が作られているものと考えられるが、この結果酸性領域で活性の高いシスプラチンおよびマイトマイシンCや、低酸素で活性化されるマイトマイシンCの併用効果が高く出たものと考えられる。これら低酸素環境はアポトーシスを誘導することが知られているが増感効果の機序として腫瘍細胞致死におけるアポトーシスの関与について組織学的な検討を行ったがAK-2123の併用により有意な変化は認められなかった。
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