研究概要 |
精神分裂病では幻覚、妄想のみならず、不安、攻撃性など情動面の精神症状が顕著に出現する。特に攻撃性は時に殺人などの暴力や治療上の処遇困難な一因となることは周知の事実である。しかも、精神分裂病のモデルとされる覚醒剤精神病でも、幻覚妄想の他しばしば著しい攻撃性の亢進がみられ、医学的にも社会的にも大きな問題となっている。本研究では精神分裂病ならびに覚醒剤精神病において重要な問題である攻撃性に焦点をあて、精神分裂病の動物モデルである慢性覚醒剤中毒モデルの攻撃行動について検討する。 Methamphetamine(MAP)隔日漸増投与によって慢性覚醒剤中毒モデルを作成し、攻撃性の増強に覚醒剤反復投与が影響するかどうかを検討した。ラットを個別飼育した直後から、MAP2.5-10mg/kgを隔日漸増投与(1日2回、計8回の皮下注射)し、最終薬物投与の1時間後、および断薬の1週間後に攻撃行動を観察した。各回の投与量をそれぞれ半分、2倍としたときの攻撃行動の変化についても検討した。観察上はMAP反復投与により、単回投与に比べて攻撃行動が増強して出現する傾向がみられたが、現在さらに再現性、行動の定量法の検討を行っている。MAP投与法と行動解析法が確立した後、MAP投与の前処理として種々の薬剤を併用投与し、攻撃行動の増強を阻止できるかについて検討する予定である。検討する薬剤は選択的D1アンタゴニストであるSCH23390、選択的D2アンタゴニストであるnemonapride、定型抗精神病薬であるhaloperidol、非定型抗精神病薬であるclozapine、risperidone、NMDA受容体アンタゴニストであるMK-801、protein kinase C阻害剤であるstaurosporine、抗てんかん薬であるcarbamazepine,lithiumなどである。また、攻撃行動の出現した直後に断頭にり脳を取りだし、内側前頭前野、扁桃体、側坐核、線条体をはじめいろいろな脳部位におけるモノアミン代謝物の含量を測定し、モノアミン系の活動について検討する。さらに、以上のモノアミン代謝の検討によって反応がみられる部位を特定した後に、攻撃行動の際のモノアミンの放出の変化を、脳内透析法により直接測定する。
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