研究概要 |
アルツハイマー型老年痴呆患者の睡眠・覚醒リズム障害に対する外因性メラトニン補充療法の治療効果を検討した。対象は、同一施設に3ヶ月以上入所中で生活スケジュールを合致させたSDAT患者7名(女性、平均年齢73.6歳)である。消灯2100時〜起床0600時までを夜間時間帯とし、照度を25ルクス以下に抑えた。2週間の治療前観察期間の後に、6mgのMLTもしくはプラセボ(PCB)を4週間にわたり2100時にdouble-blind cross-over designにて投与した。MLT投与相およびPCB投与相の間には2週間以上のintervalを設けた。全研究期間にわたりアクチグラフおよび睡眠・行動表を記載した。MLTおよびPCB投与期間の最終日の1200時から2時間おきに24時間にわたり100ルクスの低照度下で採血を行い、血清中MLT濃度をradio-immuno assayにて測定した。研究の実施にあたり、被験者およびその家族に研究の主旨を説明し同意を得た。 PCB投与時に比較してMLT投与時には、夜間活動量比率(F=3.44,df=2,p<0.05)および夜間の行動障害スコア(p<0.05)の有意な低下が認められた。MLT投与は総活動量および日中活動量には有意な変化をもたらさなかった。経口投与後、血清MLTレベルは速やかに上昇し投与1時間後には最高血中濃度(平均3724.3±1046.6pg/ml)に達したが、その後速やかに消失し翌日の14時には生理的分泌レベルにまで復した。 これらの結果は、外因性MLTがSDAT患者における睡眠障害および随伴する行動障害の治療に際して有用である可能性を示唆している。特に、高齢者での睡眠障害治療の際に常に問題となる連続投与時の薬物体内蓄積や日中の過鎮静が認められなかった点は臨床上意義深い。
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