研究概要 |
平成9年度においては,6名の被検者を対象にしてREM睡眠時における急速眼球運動に伴う頭皮上の電位変化を記録した。その結果,急速眼球運動の出現に伴って緩徐な陽性の電位変化が出現するのが観察された。以前に対象とした6名と今回に対象とした6名を合わせた12名の全員において,緩徐な陽性の電位変化が観察されたことから,この電位変化は極めて再現性のある現象として出現することが確認された。本電位変化の時間的推移に関しては,急速眼球運動の開始時点より約150msecの潜時にて出現し始め,約200msecの潜時の付近に最大頂点をもち,約250msecの潜時にて消失することが確認された。また,本電位変化の頂点振幅に関しては,被検者により多様性をもち,3μVより15μVの幅があることが判明した。さらに,本電位変化の頭皮上分布に関しては,前頭部から中心部に優勢の広汎な頭皮上分布を示すことが確認された。 次に,覚醒時における新奇な視覚刺激に対して出現するP300を5名の被検者にて記録した。この際に,視覚刺激をCRT画面上に写し出した様々な形態をもつ視覚的な対象物を用いて検討した。その結果,標準刺激の中にランダムに挿入される新奇な刺激が,標準刺激と比較して色や形態が大きく異なるほど,新奇な刺激によって誘発されるP300の振幅は大きくなることが確認された。また,新奇な刺激の出現率が標準刺激の出現率の半分以下の場合には,被検者に何らかの課題を与えなくとも,受動的にCRT画面をながめるだけで再現性のあるP300が出現することが確認された。
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