アルツハイマー型痴呆におけるApoE多型と画像診断からみた病変分布との関係について検討した。 対象は非痴呆老人(対照)30例(平均年齢80±10歳)、アルツハイマー型痴呆50例、うち早期発症型(AD)22例(同60±5歳)、晩期発症型(SDAT)28例(同79±7歳)、ピック病9例(63±7歳)、脳血管性痴呆26例(同85±5歳)であった。ε4アリルの頻度は、対照0.07、アルツハイマー型痴呆全体で0.25、ADで0.18、SDATで0.30、ピック病0.22、脳血管性痴呆0.12で、対照と比較してSDATでは有意に高頻度、DAT全体、ピック病では、頻度が高い傾向がみられた。ApoE4は、アルツハイマー型痴呆のうちで、晩期発症型との関係が深いと考えられた。 ついで、対照群(21例)、SDATε4(-)群(8例)、SDATε4(+)群(13例)の3群に分けて、CTあるいはMRI上の、脳室の大きさの計測値を比較した。SDATでは脳室は全般的に拡大するが、相対的な下角の拡大の程度を評価するために、下角/体部比を検討したところ、対象群4.7±2.6%、ε4(-)群では、6.4±4.1%、ε4(+)群では、10.6±6.5%(いずれも右側)であり、ε4(+)群では対照群と比較して有意に増大しており、ε4(-)群と比較しても増大している傾向がみられた。以上から、ε4は側脳室下角の拡大と関係した側頭葉病変との関係があることが示唆された。 同様にSPECTからみた脳血流量との関係では、視察的にはε4(+)群ではε4(-)群と比較して(アルツハイマー型痴呆群全体)、ε4(+)群では前頭側頭葉の血流低下のパターンを示すものが有意に多く、前頭側頭葉/頭頂葉比でみると、有意ではないがε4(+)群で相対的に前頭側頭葉の低下傾向が示された。
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