1 視束前野の破壊実験 視束前野破壊動物に10分間の拘束ストレスを加えると、コルチコステロン、ACTH両者の反応が、コントロールラット(sham)に比べて増強した。即ち、ピーク値が高くなるとともに、反応曲線の回復が遅延傾向を示した。この結果は、視束前野に抗ストレス反応機能があることを示唆している。また、ホルモン反応の回復が遅延することから、ストレス反応回復にも関与しているのではないかと考えられる。 2 視束前野の刺激実験 上記の結果より、視束前野の刺激実験を行った。視束前野を電気刺激しながら拘束ストレスを加えると、ストレス反応(コルチコステロン、ACTH)が減弱した。視束前野の刺激のみでは上記ホルモンにほとんど影響はなく、視束前野にストレス抑制機能があることを示す結果であると考えられる。 3 背側部中脳中心灰白質の刺激実験 当初より推定していたストレス反応統御の拮抗する二つの中枢のうち、ストレス反応惹起部位と思われる背側部中脳中心灰白貿の10分間刺激(電気)は、拘束ストレスと全く同様のホルモン反応パターンを惹起した。やや長期(1時間程度)の同部位刺激は、明らかな胃出血を惹き起こしたことから、かなり強いストレス状態をつくっているものと考えられる。 4 今後の展望 ストレス反応促進部位に関しては、もっと弱く長い刺激を負荷して、慢性ストレス状態をつくれるか否かを調べたい。ストレス抑制部位に関しては、どのレベルでストレス反応を抑制しているのかを調べたい。さらに、それぞれの相互作用もぜひ研究する必要がある。
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