研究概要 |
神経系由来株化培養細胞C6を用いて以下の事柄を明らかにした。 1.リポポリ多糖(LPS)による細胞内情報伝達系の変化 LPSの前処置がセロトニン刺激性の細胞内カルシウム動員を抑制した。Gキナーゼ阻害剤(H-8,KT5823)がこの抑制に拮抗した。さらに、LPSにより、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)が発現し、細胞内cGMP産生が増加した。LPSによるiNOSの発現とcGMP産生の増加はiNOS合成阻害薬であるdexamethasoneにより阻害された。細胞膜透過性の高いcGMPアナログやNOドナーであるSNPでもセロトニン刺激性の細胞内カルシウム動員を抑制した。これらの一連の調節はトロンビン刺激性細胞内カルシウム動員系でも観察された。以上のようにLPSによる抑制にはiNOSの発現に続く、Gキナーゼ活性化の経路の関与が推測された。 2.熱ストレスによる細胞内情報伝達系の変化 抗HSP-70抗体により認識される蛋白質が、熱ストレス負荷細胞、非負荷細胞のすべてに認められたが(HSC-70)、熱ストレス6、9時間後の細胞のみは、2種類の蛋白質が発現していた(HSP-70)。一方、熱ストレス1,3,6時間後の細胞において、10μMセロトニン刺激による細胞内カルシウム上昇が熱ストレス処置群で有意に低下しており、この低下は熱ストレス12,24時間後では完全に回復していた。HSP-70の合成阻害剤であるquercetinを細胞に前処置しておくと、HSP-70の発現がなくなり、また、熱ストレス12時間後の細胞内カルシウム動員の抑制からの回復が阻害された。以上の結果から、熱ストレスによりHSP-70が誘導され、熱ストレスがセロトニン-2A受容体機能を修飾することが示唆された。
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