研究概要 |
今回我々は向精神薬の副作用発現の機序解明を目的として,日本人の精神科領域の患者について,CYP2D6とCYP2C19の遺伝多型(PMか否か)と薬物の血中濃度上昇並びに副作用発現に対する脆弱性との相関関係を明らかにしたいと考え,さらにP-450を誘導して一方の薬物の代謝を亢進させ,その薬物の血中濃度を低下させたり,あるいは逆に,P-450の酵素活性を(競合)阻害してP-450に代謝される薬物の血中濃度を高めるような薬物間の相互作用を調査することが必要であると考えた.すなわち,向精神薬の血中濃度が異常値を呈する患者と正常範囲内の値を呈する患者,および重篤な副作用が頻出する患者と起こりにくい患者を対象に,そのCYP2D6やCYP2C19の遺伝子構造よりgeno typeを調べ,PMか否かを決定し,また併用薬の組み合わせを検討することにより,CYP2D6やCYP2C19の低活性と薬物に対する脆弱性との相関関係を解明し,さらにCYP2D6やCYP2C19によって代謝される薬物間で薬物動態的に相互作用を起こしやすい組み合わせを調査した. この結果,CYP2D6やCYP2C19のPMタイプが抗てんかん薬のフェニトインの副作用に対する脆弱性と相関する可能性は多少はあるものの,それ以外にCYP3A4といったアイソザイムと向精神薬の副作用との関連も調べる必要があることを新たに判明した。
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