気分障害は、有病率も高く病因の解明とさらに有効な治療法の開発が待たれている疾患で、精神疾患のなかでも遺伝的要因が最も大きいとされる。この疾患関連遺伝子変異や多型を解明することによって、精神神経疾患の病因に迫れるのみならず、新たな治療法の開発に結びつく可能性が高い。最近、双極性気分障害と21番染色体長腕との連鎖が異なった研究室から相次いで報告され、いずれも21番染色体長腕(21q22.3)に存在するPFKLやD21S171マーカーと気分障害との連鎖が有意であることを示している。 今回私は、感情障害と21q22.3の関連を明らかにすべく、PFKL座位からわずか数100kb以内に存在しているTMEM1(transmembrane protein 1、Na^+チャンネル類似の膜貫通型たんぱく質)、PWP2(Periodic Tryptophan(W)Protein 2、Gたんぱく質β サブユニット類似たんぱく質)、GT335(神経系で発現している未知の遺伝子)の3つの遺伝子を候補遺伝子と考え、これらの遺伝子の多型を確認し、患者群及び正常群での関連を検討した。文書によるインフォームドコンセントを得た、気分障害を主とした疾患患者群(分裂感情障害、うつ病性障害、双極性障害、強迫性障害、パニック障害)、年齢及び性の一致した正常群を用い、それぞれの白血球から遺伝子DNAを抽出し、遺伝子特異的PCRを行って、多型について制限酵素で切断もしくは、SSCP(single sequence conformation polymorphism)を行い解析した。精神障害の病型分類は、DSM-IVに基づき行った。その結果、これら3つの遺伝子の多型と疾患との関連を確認することはできなかった。今後、症例数を増やして関連を確認すること、および、21q22.3周辺領域のその他の遺伝子について検討することを予定している。
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