研究概要 |
1 精神分裂病のP300トポグラフィ 精神分裂病者(N=135)および健常対象者(N=80)について頭皮上16電極における事象関連電位P300について検討を行った。精神分裂病全体と健常者でみた場合P300の分布に左右差はなく、いずれの部位でも振幅が低下していた(16部位のP300振幅平均値は健常者が8.4±5.8μv、精神分裂病者が4.8±5.3μV)。亜型に分けて検討すると、妄想型(N=57)の場合、頭皮上左側部位ではP300振幅の平均値はT5:4.8±3.3μV、P3:8,2±5.3μV、Pz:9.7±5.9μVと低下していた(P<0.05)が、右側の部位ではP4:8.5±5.3μV、T6:5.4±3.4μVと他の部位に比べ、より健常者(P300振幅平均値がそれぞれT5:7.6±4.3μV.P3:12.2±5.2μV、Pz:13.9±5.8μV、P4:12.5±5.0μV、T6:7.4±4.3μV)に近い振幅を示した。 2 精神分裂病のP300トポグラフィと解剖学的構造物との相関 初発で未治療の精神分裂病者9名と性・年齢を一致させた健常者9名に事象関連電位の記録と脳の定量的MRI解析を施行し、思考障害との関連が報告されている左上側頭回後半部の容積については精神分裂病者において低値の傾向が認められた(p=0.06)。 3 事象関連電位3dトポグラフィの今後の課題 電極数を増やすことにより、頭皮上P300の分布の形状が異なることが明らかになっており、P300の3dトポグラフィと解剖学的構造物との相関を調べるためには現在研究されている最高の電極数である128チャンネル記録が望ましい。現在報告者の講座で128チャンネルの記録を開始しており、今後その結果について報告していく予定である。
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