精神科校医として、奈良県の養護学校において、1992年度より個々の発達段階やさまざまな危険因子を構造化された面接により定期的に評価しながら、精神発達遅滞児の不適応行動についての縦断的研究を行っている。今年度の研究の目的は、精神発達遅滞児の医療機関の利用状況を調査し、通院の標的症状、薬物使用の有無とその効果について、年齢と診断を考慮して検討を行うことと保護者の二ーズを知ることである。 対象は県内の2養護学校に在籍する児のうち、保護者および学校側に本研究の趣旨を説明し同意の得られた児161名であり、男児101名、女児60名、小学部44名、中学部38名、高等部79名である。結果は、161名中77名(47.8%)が通院中であった。現在および過去に通院したことのある138名のうち、通院理由(複数回答可)は、「発達を伸ばすための治療・療育相談52.9%」「てんかん発作37.0%」「障害の診断や診断書のため33.3%」「多動や集中困難14.5%」「パニックやこだわり16.7%」「自傷行為9.4%」であった。薬物については、「現在服薬中34.8%」「過去服薬歴あり15.5%」「未服薬36.6%」で、その効果については服薬歴のある81名中「有効54.3%」「やや有効21.0%」「無効8.6%」であった。薬物の効果について、診断を考慮すると、てんかん群で「有効77.8%」、非てんかん群で「有効39.1%」であった。向精神薬を服用している児は、14名(男児12名、女児2名)で、学年別には小学部1名、中学部1名、高等部12名で、年長男児に多いことがわかった。 医療機関への感想は、「満足40.4%」「不満44.7%」で、不満の理由としては「待ち時間が長い32.3%」「障害児への理解不足20.5%」などがみられ、今後期待することとして「発達を伸ばす治療教育58.4%」「発達障害の原因究明44.7%」「不適応行動へのアドバイス39.8%」「家族カウンセリング39.1%」などがみられた。
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