研究概要 |
対象:埼玉医科大学精神医学教室,国立精神神経センター武蔵病院・同国府台病院に通院中の概日リズム障害を呈する患者31名及び正常コントロール27名を対象とした。被検者にはそれぞれ研究内容を良く説明し、文章による承諾書を得た上で静脈血を採取し、ゲノムDNAを抽出した。 方法:SSCP法及びdirectsequencing法等を用いてメラトニン1A,1B受容体遺伝子の変異の有無を解析した。上記の方法でcoding region全域を調べるには、既に発表されているcDNAの核酸配列以外にnontranslated regionやintron部分の配列を知ることが必要なので、独自に解析しその結果をPCRprimerの設計に使用した。SSCPの際には変異の見逃しを最小限にするため、PCR fragmentの長さを250bps以下にし、ゲルもグリセロールを含むもの、含まないものの2条件で電気泳動を行った。 結果:1A,1B受容体遺伝子のそれぞれから、アミノ酸配列の置換をg伴う核酸配列の変異を2種類ずつ見出した。非24時間睡眠覚醒症候群7例のうち、3例がメラトニン1A受容体に変異を伴っていた。また、そのうち1例が、1A,1B受容体のいずれも変異を持っていた。 メラトニン1A,1B受容体はそれぞれ双補的に作用しているのではないかと考えており、この症例に関しては、1A,1B受容体の双方に変異を持つことが疾患発症の原因となっている可能性が高いと考えられた。 現在これらの変異を持つ受容体遺伝子を培養細胞に発現させ、メラトニンとの結合能やcAMP抑制作用など受容体の機能に変化が生じていないか調べているところである。
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