最近の研究ではAIDS痴呆がgp120によるNMDAレセプターの過剰興奮により生じることが推測されている。本研究では、Heat Shock Protein(HSP70)を指標とすることによりNMDA受容帯拮抗薬の神経細胞の障害を可視化することから研究を開始した。昨年我々はAIDS痴呆の治療薬として現在アメリカで臨床治験中であるmemantineが神経障害を起こすことを報告したが、本年はその神経障害を起こす成因の解明につとめた。 その成果としては、1)NMDA受容体拮抗薬による神経障害においてムスカリニック受容体が関与しており特に3層と5層で異なること(Brain Research 1997)、2)その神経障書の発現においてホスホジエステラーゼ阻害薬が神経障害を防止できないこと(European Journal of Neuroscience 1997)を報告した。またAIDS痴呆のモデル動物としてgp120の脳室内慢性投与の試みを始めた。エイズ痴呆のモデル動物になりうるか組織学的検討を行い始めた。 今後の方向としてはNMDAレセプター拮抗薬による神経細胞障害の機序を調べるとともに、そのAIDS痴呆への臨床的活用の可能性について来年も検討を行っていく予定であった。しかし研究代表者の富高がカリフォルニア大学のSharp教授とエイズ痴呆の共同研究のため留学が決まったため本年度で終了となった。しかし研究テーマとしては留学後も継続していくので、科学研究費の補助は終了するが今後も前述したような計画で研究をすすめていきたい。
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