母子分離ストレスを負荷された成熟ラットに対し心理的ストレスを暴露することによって引き起こされる脳内GABA(γ-butylicacid)の放出を脳内透析法により測定し、母子分離つまり乳幼児期の母子間のアタッチメントの不全性によってもたらされると思われる成長後の精神機能の脆弱性とGABA神経系の関係を明らかにすることを目的に現在実験を行なっている。対象動物としてWistar系雄性ラットを用いた。出生後三日目より一日十五分間、母ラットから仔ラットを隔離する操作を離乳期に相当する生後三週まで続け、約八週齢になった後、再度ストレスを負荷した。ストレスは、multiple chamber boxを用い、自らは電撃ストレスに負荷されないが、電撃ストレスを受ける他のラットが示す鳴き声、もがきなどに曝される心理的ストレスを二十分間負荷した。ラットの内側前頭前野にプローブを挿入し、試料を脳内透析灌流法により経時的に回収し、高速液体クロマトグラフィーを用い、OPA(O-phthaladehyde)によって誘導体化されたGABAを分光光度計によって測定した。その結果、対照群に比べGABAの基礎放出量、またストレスによって引き起こされたGABA放出量の増加に有意な差は認められなかった。そのため分離時間を一日六時間に延ばし、成熟ラットに対するストレスを十五分間の用手的拘束ストレスに変更し再度実験を施行中である。傾向として対照群におけるGABA放出がストレス負荷中から増加するのに対し、母子分離ストレス負荷群ではGABA放出が遅れて増加することが見い出されている。今後さらに実験を続けると共に、GABA受容体作動薬を投与し、その反応を観察する予定である。
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