研究概要 |
長期間の感情障害の治療過程において、病相の頻回化は、患者のQ.O.L.に重大な支障をきたす。Wehrらは、Rapid Cyclingの危険因子として、三環系抗うつ剤の使用、高齢化、女性であることなどを報告しているが、その機序については不明である。そこで今回、三環系抗うつ薬Clomipramineと炭酸リチウムの老齢ラットフリーラン周期に及ぼす影響を検討した。 実験には、Wistar系雄性ラット(若年ラット:9週齢、老年ラット60週齢)を用いた。行動リズムの計測には、摂食摂水が可能な側室を持つ回転かごを用いた。恒常暗下で十分なフリーラン周期を確認した後、若年ラットと老齢ラットをそれぞれ6群に分けた。(Cont⇒Li,Cont⇒Cl,Li⇒Li+Cl,Cl⇒Cl+Li,Li+Cl⇒Li,Li+Cl⇒Cl Cont:通常の飲料水Li:Lithium C1:Clomipramine)投与量はClomipramine、炭酸リチウム4を飲料水に加えた。また、Clomipramineと炭酸リチウムの血中濃度の測定は活動開始前の値を、蛍光法およびHPLCを用いて測定した。 フリーラン周期は、老年ラットで24.17、若年ラット24.56と老年ラットが若年ラットにくらべて、フリーラン周期が短かった。炭酸リチウムは老年、若年ラットでフリーラン周期を延長させた。Clomipramineは、老年、若年ラットでフリーラン周期を短縮させたが、老年ラットの方が周期短縮幅は大きかった。Clomipramineを投与後にリチウムを追加投与した群では、リチウム投与によって、老年、若年ラットともフリーラン周期は有意に延長した。これらの結果から、老年ラットは若年ラットに比べて、Clomipramineによる周期短縮作用が強く、炭酸リチウムがClomipramineによる周期短縮作用を弱めることが推察された。
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