感情障害の治療過程において、病相の頻回化いわゆるRapid Cydingは、患者のQ.O.L.に重大な支障をきたす。Rapid Cyclingの危険因子としては、高齢化、三環系抗うつ剤の使用などが報告されている。本研究では三環系抗うつ薬Clomipramineと炭酸リチウムの老齢、若年ラットフリーラン周期に及ぼす影響を検討した。また、老年ラットは全体の行動量が低いことがサーカデアン同調機構に大きく関与するこれまでの実験結果から、行動抑制とSCH23390の行動リズムに及ぼす影響を調べた。実験には、Wistar系雄性ラットを用い、行動リズムの計測に回転かごを用いコンピューターに取り込んだ。十分なフリーラン周期を確認した後、各種薬物を若年ラット群と老齢ラット群各々にいくつかの条件で投与した。フリーラン周期の解析は、カイ自乗ペリオドグラム法を用いた。また、各々の薬物の血中濃度の測定を蛍光法およびHPLCを用いて測定した。行動抑制は老年ラットで有意に再同調を遅延させた。SCH23390は、その行動抑制と伴に行動リズムの位相を変化させた。フリ一ラン周期は、老年ラットが若年ラットにくらべて、フリーラン周期が短かった。炭酸リチウムは老年、若年ラットでフリ一ラン周期を延長させ、Clomipramineは短縮させた。さらに老年ラットの方が周期延長短縮幅が、若年ラットに比較して大きかった。これらの結果から、高齢化によりサーカデアンリズムを中心とした時計機構、さらには行動のフィードバック機構に脆弱性が存在することが明らかとなり、気分調整薬が若年者より時計機構により大きな影響を与えやすくRapid Cyclingの発生過程における重要な因子である可能性が示唆された。
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