私どもはセロトニン受容体のアゴニストであるメタクロロフェニルピペラジン(m-CPP)を用いた神経分泌的負荷試験を応用して、リチウムやセロトニン系抗うつ薬の反応予測を行おうとしている。つまり、リチウムやセロトニン系抗うつ薬はシナプス間隙におけるセロトニンを増加させることが判明しているので、分泌されたセロトニンを受ける側の受容体の機能によってこれらの薬物に対する反応性が予測できるのではないかと考えている。今年度は、躁病患者1名と大うつ病患者5名におけるリチウム反応性に関して検討した。これらの患者の負荷試験結果とリチウム反応性の関連を次のようにまとめた。まず、負荷試験結果に関して、プロラクチン、コルチゾール、ACTHの基礎値(m-CPP服薬前の値2回分の平均値)を最大値から差し引くことでそれぞれのホルモンの分泌反応の指標とした。さらに、精神症状に関しても基礎値を最大値から差し引くことで指標とした。また、リチウム反応性に関しては、リチウム追加直前の評価点から3週間後の評価点を差し引き、この差を直前の評価点で除することにより改善率とした。その結果、各種ホルモンの分泌反応と改善率の間には有意な相関を認めなかった。ただし、精神症状の中で「緊張している」と改善率との相関は有意な傾向にあった(P=0.10)。現時点ではまだ症例数が少ないため、現時点でm-CPP負荷試験がリチウム反応性の予測に有用か否か結論は導けない。来年度はさらに症例を増やして検討を重ねる予定である。
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