前骨髄性白血病細胞HL60は甲状腺ホルモン単独処理ではアポトーシスを起こさないがレチノイン酸の存在下ではレチノイン酸単独のアポトーシス誘導効果を増強することを報告している。本研究では、レチノイン酸により誘導されるアポトーシス責任遺伝子の単離及びこの蛋白のアポトーシスに対する役割特に甲状腺ホルモンとの関係を解明することを最終目標とする。 当初の実験計画に従い、昨年度までにHL60細胞のレチノイン酸耐性細胞を樹立した。この細胞のうち、R9細胞はレチノイン酸核受容体のリガンド結合領域に1アミノ酸の脱落を認めこれがレチノイン酸耐性の機序に関与していると考えられた。この細胞を用い今後親株のレチノイン酸、甲状腺ホルモン処理後のRNAと、同様の処理後の耐性細胞のRNAからディファレンシャルディスプレイ法を利用してレチノイン酸、甲状腺ホルモン特異的アポトーシス責任遺伝子の単離を行っている。現在親株でのレチノイン酸、甲状腺ホルモンにより反応する遺伝子を単離、この遺伝子が耐性株で同様のリガンドで反応するか否か検討中である。ノーザンブロッティング後、引き続きこの遺伝子の全長をクローニングする予定である。その他レチノイン酸のアナログを用いレチノイン酸核受容体とレチノイドx核受容体を別々に刺激することで、甲状腺ホルモン存在下にこれらのアナログが細胞周期、アポトーシスに個々の影響を与えることが判明した。そしてこの刺激がbcl-2 familyの蛋白の発現に特異的に影響を与えていることをmRNAレベル、蛋白レベルで明らかにした。
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