研究概要 |
1)streptozocin糖尿病ラットを発症4週及び、24週に用いて、心血管組織での酸化ストレス過剰の有無を検討するために、過酸化脂質含量をFox法で定量した。過酸化脂質は対照群に 比較して4週及び24週糖尿病ラットにおいてそれぞれ60%、260%の増加を認めた。 2)酸化ストレスにより活性化されることの知られている転写因子NF-kB,AP-1の活性をゲルシフト法を用いて検討したところ、糖尿病ラット心臓で有意な活性上昇を認めた。この活性上昇はインスリン治療にて予防できた。 3)転写因子NF-kB,AP-1によって発現調節されるヘムオキシゲナーゼ1のmRNA発現をNorthern Blot解析により検討した。4週糖尿病ラットの心臓、大動脈において2-4倍にその発現は増加し、インスリン治療により抑制された。 4)抗酸化剤(probucol)でのこれら異常に対する治療効果を検討したろ、転写因子NF-kB,AP-1の活性の低下、ヘムオキシゲナーゼ1mRNA発現の正常化を認めた。 以上の結果より、糖尿病において心血管組織に特異的な遺伝子発現異常が存在し、転写因子NF-kB及びAP-1の活性化異状が関与すると考えられた。糖尿病に伴う酸化ストレスの亢進はこれら転写因子活性の増加に関与していることが推測された。
|