研究概要 |
1.肝臓のPPAR群へのトログリタゾンの影響 1)雄のWitarラット10匹にトログリタゾンを4週間経口投与したところ、血糖、血中脂質、血中過酸化脂質濃度が低下し、インスリン感受性は改善し、肝臓でのペルオキシゾームのβ酸化活性とグリコーゲン合成酵素活性が上昇した。以上より、我々はトログリタゾンが脂肪組織および筋肉組織だけでなく肝臓組織においてもインスリン感受性改善作用も有することを明かにした(Inoue I, et al:Metabolism44:1626-30,1995)。 2)トログリタゾンによる血中過酸化脂質濃度低下作用の機序を解明するため、Witarラット10匹にTrを4週間経口投与しリポ蛋白を調製し,リポ蛋白の酸化が抑制されるかを測定したところ、著しくリポ蛋白の酸化が抑制された。以上より、我々はTr薬剤自体が活性酸素消去作用があり抗動脈硬化作用のあることを明かとした(Inoue I, et al:Biochem Biophys Res Commum235:113-116,1997)。 3)トログリタゾンによる肝臓でのペルオキシゾームのβ酸化活性の上昇の機序を解明するため、トログリタゾンが結合する可能性のある核内受容体であるPPARのα型、β型、γ型のメッセンジャーRNA(mRNA)の発現量をRT-PCR法にて評価したところ、明らかな誘導は認めず(Inoue I, et al:Biochem Biophys Res Commum237:606-610,1997)、肝臓でのトログリタゾンの作用する新たなPPARの型の存在が示唆された。 2.肝臓のPPARαへの脂肪酸の影響 1)前述したように、PPARγのリガンドであるトログリタゾンが過酸化脂質濃度低下作用を有することを我々は明らかにしたので、次にPPARαと血中過酸化脂質濃度との関連について検討した。我々はPPARαのmRNAのレベルと血中過酸化脂質濃度低下作用もよく相関し、その機序として、肝臓での活性酸素を消去する酵素であるカタラーゼおよびCuZn-SODの遺伝子レベルでの調節の存在を明らかにした(Inoue I, et al:Life Science(in press))。
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