研究概要 |
我が国においても肥満は増加傾向にあり、その病態は糖尿病・高血圧・高脂血症や動脈硬化症と密接に関連し、成人病の予防・治療との関係で大きな社会問題になっている。最近、肥満(ob)遺伝子蛋白レプチンやβ3-アドレナリン受容体(β3-AR)遺伝子多型性が報告され、注目されている(Nature372:425-432,1994;N Engl J Med333:343-354,1995)。β3-受容体刺激薬は細胞内のcAMPを上昇させ、白色脂肪においては脂肪分解、褐色脂肪においては熱産生作用を持つので、肥満の治療薬として期待されている。また、PPARγは脂肪細胞の分化誘導を調節する転写因子であり(Proc Natl Acad Sci USA91;1786-90,1994)、チアゾリジン系のインスリン抵抗性改善薬の作用部位でもある。 本研究では、肥満型糖尿病モデルラット(Wistar fatty)と対照Leanラットの傍精巣脂肪組織からコラゲナーゼ処理にて分離した脂肪細胞を用いて、β3-受容体刺激薬ZD-2079の、β3-AR,レプチン,PPARγの発現調節に及ぼす影響を検討した。ZD-2079を1μM添加したDMEM medium中で24時間培養すると、RT-PCR法にてβ3-ARのmRNA量はWistar fattyとLeanラットでそれぞれ3.5倍,2.6倍に、ObmRNAは約半分に減弱したが、PPARγの発現量はどちらにも変化は認められなかった。現在臨床的にも、若年および中高年健常者や糖尿病患者のレプチンと血圧、体脂肪分布、インスリン抵抗性などの関係についても検討中である。
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