研究概要 |
血糖コントロールや糖尿病罹病期間の影響を除外した糖尿病性神経障害(DN)の成因を探索するため、私共は赤血球内AR酵素量とAR遣伝子の多型性について検討した。 【対象と方法】8年以上高血糖状態(平均HbA1c≧8%)でかつDNが軽度なNIDDM23名(軽症群)と、推定罹病期間5年未満で高度なDNを呈したNIDDM20名(重症群)とを対象とした。神経障害の程度は自他覚神経所見より総合的に判定した。赤血球内AR酵素量はELISA法にて定量し、AR遺伝子の多型性は白血球より抽出したDNAをPCR法にて増幅して決定した。 【結果】DN軽症群と重症群との間に、性、糖尿病治療法、喫煙や飲酒歴、過去平均HbA1cには差なく、赤血球内AR酵素量(8.3±1.3vs11.9±5.7ng/mgHb)、年齢、過去最大BMI、網膜症に有意な差が認められた。Logistic回帰分析では赤血球内AR量と過去最大BMI-検査時BMIが有意な危険因子として判定された(X^3=32,P<0.0001)。 AR遣伝子の多型性では、アリール3と7が軽症群に多く、アリール10が重症群に多く認められた。 【結論】赤血球内AR酵素量とAR遣伝子の多型性はDNの進展と有意に関連しており、血糖と糖尿病罹病期間の影響を除外したときのDNの成因として重要と考えられた。
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