肥満Koletskyラットにおけるレプチン遺伝子発現および血中濃度の検討 代表者らはすでに、遺伝子性肥満モデル動物Koletskyラットにおける肥満の原因遺伝子がレプチン受容体(Ob-R)であることを証明している。Koletskyラットは高血圧自然発症ラット(SHR)由来で、ヒトにおける肥満と高血圧の合併モデル動物と考えうる。代表者らはKoletskyラット脂肪組織におけるレプチンの遺伝子発現および血中濃度を検討した。20週齢のラットを用いた副睾丸周囲、腸間膜、皮下、後腹膜の各脂肪組織におけるノーザンブロット法による検討では、肥満ラットにおけるレプチン遺伝子発現は対照ラットの4.4倍から56倍に達していた。また、RIA法による肥満ラットのレプチン血中濃度は対照ラットの104倍におよんでいた。これらの結果はレプチン受容体異常におけるレプチン分泌のnegative feedback機構の欠損を示唆するが、これらのことをふまえて、今後さらに詳細な検討を続けていく予定である。 ヒト単純性肥満患者におけるOb-R遺伝子異常の検索 ヒト肥満患者においてレプチン遺伝子の変異はきわめてまれで、わずかに1家系2患児の報告をみるのみである。代表者らはヒト単純性肥満患者におけるOb-R遺伝子異常の検索を行い、日本人の母集団において、Ob-R遺伝子翻訳領域に5箇所のアミノ酸置換を含む7箇所の塩基配列variantを同定した。BMI(body mass index)>30を肥満患者(n=47)、BMI<25を対照(n=68)として比較検討したところ、これらのvariantは、肥満とは相関していないことが明らかとなった。これらの結果はヒト単純性肥満患者においてもOb-Rの変異はまれであることを示し、肥満におけるレプチンの分泌低下やレプチン抵抗性の重要性を示唆するものである。
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