研究概要 |
Nitric oxide(NO)による造血幹細胞の増殖制御について検討した。マウス造血支持細胞初代培養(Dexter culture)及びマウスストロマ細胞株(PA-6,OP-9,ST-2)は、IFN-γ+LPS刺激により誘導型NO合成酵素(iNOS)を発現し、NOを産生した。一方、フローサイトメトリーにより分離したマウス造血幹細胞分画(Lin^+c-kit^+Sca-1^+)もINF-γ+LPS刺激によりiNOSの発現をみた。ストロマ細胞株(PA-6)と純化した造血幹細胞を共培養し、IFN-γ+LPSにより刺激したところ、造血が抑制された。この抑制はNO合成阻害剤(1-NIO及びステロイド)投与により回復した。また、IFN-γ+LPS刺激を解除すると再び造血が開始された。更に、NO発生剤(SNAP)により、外来性にNOを投与した場合にも同様に造血が抑制され、SNAP除去により造血が回復した。以上の結果から、NOは恒常的造血の制御に関係していることが示唆された。造血幹細胞は、IFN-γ+LPS刺激によりbcl-xLが発現増強する事から、造血幹細胞はbcl-xL誘導によりNOによりアポトーシス誘導から回避している可能性が示唆された。 様々な感染症において生体内でIFN-γが産生され、iNOSの誘導によりNO産生される。以上の結果から、敗血症やウィルス感染後にしばしばみられる造血抑制や再生不良性貧血の病態に造血幹細胞自身やストロマ細胞により産生されるNOが密接に関わっていると考えられた。NO産生制御は、これらの疾患の治療に有効であると考えられることから、現在in vivoにおけるNO誘導性造血抑制とその治療について検討中である。
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