研究概要 |
我々は、慢性骨髄性白血病の原因遺伝子であるBCR/ABLを、造血因子依存性ヒト白血病細胞株TF-1に導入し、自律性増殖を獲得した細胞株ID-1を樹立した。この細胞株において発現が増強している遺伝子はBCR/ABLによる細胞のがん化に密接な関連を有していると考えられるため、このような遺伝子の同定を試みた。方法としては、親株であるTF1およびID-1由来のRNAをDifferential Display法を用いて解析した。親株であるTF-1に比べてID-1で発現の増強がみられたバンドをクローニングし、塩基配列を決定したところ、近年新しく同定されたメラノーマの腫瘍抗原PRAMEと同一であることが判明した。PRAMEはノザン法にても、TF-1に比較しID-1で強く発現していることが確認された。次に患者検体におけるPRAME発現を逆転写PCR(RT-PCR)法により検討したところ、CML-BC(3例)およびPh-ALL(3例)では全例で高発現が認められ、CML-CP(3例)、Ph陰性ALL(2例)および正常人骨髄(2例)では発現は低いか認められなかった。PRAMEは、HLA-A24拘束性に細胞障害性T細胞により認識される腫瘍抗原として報告されている(Immunity,6:199-208,1997)が、メラノーマだけでなく肺癌、腎癌、および急性白血病等での発現が認められるほか、正常精巣での発現が高いと報告されている(同)。今回の結果は、PRAMEが、CMLやPh-ALLにおいて芽球のマーカーとなりうる可能性およびPRAMEを標的とした免疫遺伝子療法の可能性を示唆している。
|