研究概要 |
血液悪性腫瘍において、癌抑制遺伝子の不活化はその主要な発生原因であると考えられるが、p53,Rb,p16等の既知の癌抑制遺伝子の異常のみではその発症の全てを説明する事はできない。それゆえ、その発症に関与している未知の癌抑制遺伝子の同定がその発症メカニズムを理解する上で極めて重要である。本年度行った研究にて、申請者は以下の2つの知見を得た。 1.血液悪性腫瘍におけるSmad2遺伝子の変異の有無の検討。 当教室に保存されていた血液悪性腫瘍検体及び血液悪性腫瘍細胞株を用い、PCR-SSCP法により、最近同定されたSmad2遺伝子の変異の有無を検討した。検索した34例中では変異は認められなかった。この結果よりSmad2遺伝子の変異は血液悪性腫瘍の発生には深く関与していない事が明らかになった。 2.小児急性リンパ性白血病の6番長腕の最小欠損領域の同定。 113例の小児急性リンパ性白血病検体を用い、染色体6番長腕に存在するマイクロサテライトマーカーをプライマーとして、PCR法によりLOH分析を行った結果、染色体6番長腕のLOHが15%の小児急性リンパ性白血病患者に認められた。詳細な検討により6q21に2つの最小欠損領域が存在し、1つめの領域はD6S283とD6S302の間に存在し、2つめの領域はD6S275とD6S283に存在することが明らかになった。このLOHはT細胞白血病とB細胞白血病の両方に認められた。
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