1.EBウイルス陰性でヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)陽性のバ-キットリンパ腫を初めて報告し、また細胞株(Katata細胞)の樹立に成功した。Katata細胞にはHHV-6が潜伏感染しているが、今回HHV-6がどのような状態で潜伏感染しているかを検討し、またどのような刺激がウイルス遺伝子の発現に関与しているかを調べた。 (1)Katata細胞中にHHV-6DNAがエピゾームの形で存在するのか、あるいは宿主細胞DNAに組み込まれている(integration)のかをHHV-6特異的プローブを用いてFISHで調べた。その結果、ほとんどのKatata細胞に対称的なHHV-6DNAシグナルが22番染色体長腕上(22q13)に検出され、HHV-6はintegrateされた状態で存在することが判明した。HHV-6の宿主細胞へのintegrationが腫瘍化に関係しているかは今後の問題である。 (2)phorbol esterの一種であるTPAで細胞を刺激するとHHV-6の前初期遺伝子の発現が認められた。またcalcium ionophore、η-butyrate処理でも同様の結果が得られ、これらはTPAと組み合わせることで相乗効果が認められた。TPAはprotein kinase C(PKC)の活性化因子であることから、PKCやCa^<2+>シグナル伝達等がHHV-6遺伝子の発現に関与していることが示唆された。 2.HHV-6と様々な血液疾患との関連を調べた。 (1)HHV-6の感染が認められたB細胞性急性リンパ芽球性白血病例を経験し、解析の結果、HHV-6は白血病細胞の1番染色作長腕(1q44)にintegrateされていることが判明した。 (2)免疫不全状態における免疫芽球性リンパ節症の発症にHHV-6が関与していると示唆された症例を経験した。 3.ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8)と成人T細胞性白血病(ATL)にみられる皮膚疾患との関連について検討した。 (1)ATLにカポシ肉腫が合併することは稀ではあるが、ATL関連カポシ肉腫にHHV-8の関与を見い出した。 (2)ATLのような免疫不全状態患者に発生する皮膚悪性腫瘍にHHV-8が関与する例があることを見い出した。
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