1. ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)が潜伏感染しているリンパ腫細胞株(Katata)の樹立に成功したが、この細胞株を用いてHHV-6活性化機序について検討した。phorbol esterの一種であるTPA処理でHHV-6の前初期遺伝子の発現が認められたことにより、protein kinase C(PKC)がHHV-6遺伝子の発現に関係している可能性が前年度の研究で示唆されたが、今回PKC阻害剤がHHV-6遺伝子発現にどのような影響を与えるか検討した。PKC阻害剤であるstaurosporine存在下ではTPAによるHHV-6遺伝子発現が抑制された。PKCによるHHV-6遺伝子発現の関与が支持された。しかし、TPA刺激でもウイルス粒子の産生は認められなかった。本細胞株ではHHV-6が染色体に組み込まれて(integration)存在していることが判明しており、integrateされた状態からのHHV-6粒子の産生は困難と考えられた。 2. HHV-6陽性の急性リンパ芽球性白血病患者からの細胞株の樹立を試みた。本患者の末梢血単核球をEpstein-Barr virus(EBV)、Herpesvirus saimiri(HVS)でそれぞれ感染させることで、2種類の細胞株の樹立に成功した。EBVで感染させた細胞株(MS-B6)はB細胞由来で、HVSで感染させたもの(MS-T6)はT細胞由来であった。両者ともPCR法、Southern blot hybridization法でHHV-6が検出された。FISH法での解析の結果、1番染色体長腕(lq44)にHHV-6が認められ、HHV-6が染色体にintegrateされた状態で感染していることが判明した。これらの細胞株はHHV-6の染色体へのintgrateion機序の解析に有用であると考えられる。
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