研究概要 |
HTLV-1Tax蛋白によりMAPキナーゼシグナル伝達機構が修飾を受けるか否かを明らかし、また、その作用機序、作用点を明らかにするため、以下の実験を行った。 1.方法・材料 (1) Tax発現プラスミド(pCG-Tax)によるMAPキナーゼファミリーの活性化を検討するため、インフエンザHA蛋白により標識されたMAPキナーゼ発現プラスミド(ERK,JNK-1,p38)とpCG-TaxをCOS1細胞、A293T細胞にコトランスフェクションし、それぞれのMAPキナーゼ活性をImmunecomplex kinase assayにて計測する。(2)Tax蛋白によってMAPキナーゼの最終標的である転写因子(ATF2,c-JUN,Elk)がリン酸化がされ、その転写活性に関与するかを検討するため、GAL4-binding Domainとそれぞれの転写因子のactivation domainをfusionさせたプラスミド(pcDNAIII-Gal4-ATF2,-c-jun,-Elk)を作成し、pCG-Taxとレポータープラスミド(pGal4 binding site-Luciferase)をコトランスフェクションし、Luciferase assayを行う。 結果・考察(1)COS1細胞、A293T細胞ともにImmunecomplex kinase assayにてTax発現発現プラスミド(pCG-Tax)によりJNKのキナーゼ活性の上昇が認められた。その上昇はTaxの量に依存的であった。同時にJNK蛋白の発現をウエスタン法にて確認したところ、同様に増加していることがわかった。(2)上記の結果に基づき、pCG-TaxとpcDNAIII-Gal4-c-jun、pGal4 binding site-Luciferaseをコトランスフェクション後、Luciferase assayを行った所、3-5倍の活性の増加が見られた。以上より、Tax蛋白によるJNKキナーゼの活性上昇が考えられたが、その機序はJNK蛋白の増加により可能性が示唆された。また、その下流においてはc-junが活性化される際にTax蛋白がcoactivatorであるCBPをリクリートしてくる可能性が考えられ、今後それらについても検討が必要と思われた。
|