研究概要 |
FACSによる選択性を有するウイルスベクターを用いた造血幹細胞への遺伝子導入 単一遺伝子異常にもとずく先天性代謝異常症や血液系疾患などへの遺伝子治療には、自己再生能があり各血液細胞への多分化能を有する造血幹細胞に正常遺伝子を導入することが理想である。しかし現時点では、真の造血幹細胞への遺伝子導入効率は十分ではない。我々は細胞表面マーカーCD24及びGreen fluorescent protein(GFP)による選択性を有するレトロウイルスベクターを作製した。今回はこのベクターを用い造血幹細胞への遺伝子導入効率を上げる試みとして、遺伝子導入された標的細胞をFACSを用いて選択できるか否か、更にCD34陽性細胞にベクターを導入する際、骨髄ストローマ細胞(St.)や細胞外マトリックスであるフィブロネクチン(Fib.)を併用することの有用性を検討した。その結果,遺伝子の導入されたCD34陽性細胞はFACSを用いてCD24,GFPの発現により選別できることが確認された。更に、CD34陽性細胞にサイトカイン(IL-3,IL-6,SCF)刺激下において、St.またはFib.上に4日間連続でウイルスベクターを導入するとメチルセルロースを用いた造血コロニーアッセイの結果、造血前駆細胞への導入効率はSt群,Fib群は、各々21.6±5.2%,22.2±3.9.%と同等であったが、長期骨髄再構築能を有するLTC-IC(Long Term Culture Initiating Cells)への導入効率はSt。群が18.1±2.1%に対し、Fib.群は4.2±5.9%と低値であった。 以上のことから、恒久的治癒を目的とする造血幹細胞への遺伝子導入にはサイトカインとともに骨髄ストローマ細胞の併用が重要と考えられた。
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