我々は昨年まで選択マーカーを有するレトロウイルスベクターの開発を行ってきた。これは、標的細胞にウイルス上清を用いて導入した後に本当に遺伝子が導入がされた細胞のみを選択するシステムを作成しようとするものである。本年はアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)においてこの選択システムを確立した。AAVベクターでは神経系細胞への安定した遺伝子導入が可能と考えられる。そこで我々は治療用遺伝子としてASAcDNAを、マーカー遺伝子としてEGFPcDNAを有するAAVベクタープラスミドを作製した。このAAVベクターはベクタープラスミドとパッケージングプラスミド(AAV/Ad)とを同時にHeLa細胞にトランスフェクションし、さらにアデノウイルスを感染させ作成した後に、硫酸セルロースを用いたアフィニティクロマトグラフィーにより精製、濃縮し感染実験を行った。HeLa細胞におけるGFPの発現をFACSで検討したところ、約6%の細胞がGFP陽性であり、陽性細胞が選択可能であることを示し、ASA酵素活性は非導入細胞に比較し1.6倍の増加を認めた。さらにこのベクターがMLD患者由来の皮膚線維芽細胞へも導入が可能であることを確認した。
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