本研究の目的であるMLL遺伝子及びMLLと転座相手遺伝子との融合遺伝子の機能の解析の為に平成9年度は以下のように研究を進めた。 1.MLL-AF6キメラ遺伝子産物の細胞内局在の検討 我々はこれまでにMLL-LTG9及びMLL-LTG19キメラタンパクが核に局在することを明らかにして報告したが、LTG9、LTG19タンパクも同様に核に局在した。そこで、MLL遺伝子の転座相手遺伝子の一つで、その産物が細胞膜近傍に局在することが最近明らかにされたAF6遺伝子に着目し、MLL-AF6キメラタンパクが細胞内においてやはり核に局在するか否かについて解析した。AF6遺伝子のcDNAをcloningし、AF6及びMLL-AF6タンパクの細胞内局在を免疫蛍光染色並びに生化学的手法を用いて検討した。AF6タンパクは細胞質に局在したのに対し、MLL-AF6タンパクは核に局在した。また、MLL-AF6のMLL側領域のみでもMLLキメラタンパクと同様に核局在性を示した。これらの結果は転座相手遺伝子産物の性質に関わらず、MLLキメラタンパクは核に局在し、また、その核局在性には全ての転座に共通するMLLのN端側領域が重要であることを強く示唆するものと考えられる。 2.MLL遺伝子の転座切断点よりN端側領域の機能の解析 MLLのN端側領域の機能を検討する為、deletion mutantsを作製しそれらの細胞内局在を免疫蛍光染色並びに生化学的手法を用いて検討したところ、MLLのN端の複数の領域が核局在性に関与しており、最もN末側のAT hook motifsが特に重要であることが判明した。 MLL遺伝子が関与する白血病の原因を明らかにする為にはMLL遺伝子の機能を知ることが不可欠である。現在、MLL-LTG9キメラタンパク等をinducibleに発現できる系を作製し、MLL遺伝子の下流にある遺伝子の解明を急いでいる。
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