申請者はヒトレニン遺伝子プロモーター領域にDNA配列特異的な転写調節因子の結合を証明し、レニン遺伝子の発現調節機構の一部を明らかにしてきた。一方、申請者は平成8年度科学研究費奨励研究Aによる“慢性糸球体腎炎の腎局所におけるレニン-アンゴオテンシン系遺伝子の発現に関する研究"で、レニン遺伝子の発現量が個々人によりかなりの差異のあることを腎生検標本を用いたRT-PCR法で明らかにしてきた。 このレニン遺伝子の発現量の差異について、レニン遺伝子プロモーター領域にDNA配列の変異または多型が存在し、このため転写調節因子の結合状態が変化し、結果としてレニン遺伝子の発現量が変化し、ひいては腎疾患や高血圧症の病像に関与している可能性がある。すなわち、レニン分泌能の亢進例には、レニン遺伝子プロモーター部位に陰性調節部位の機能廃絶型の変化、あるいは陰性調節部位の機能亢進型の変化が、一方レニン分泌能の低下例には、それぞれの逆の変化が見い出される可能性がある。 現在のところ、カプトプリル負荷テストによりレニン分泌能を評価した腎疾患患者50例までについて末梢血液中の白血球より調製した染色体DNAを用い、レニン遺伝子プロモーター領域についてPCR-SSCP法で解析中である。
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