1.目的:ラット半月体形成性腎炎における細胞性半月体形成および線維化の時期でのTGF-βとTGF-βレセプター(TR)の発現細胞の同定に先立ち、正常および各種ラット実験腎炎での系球体上皮細胞におけるTR発現と糸球体上皮細胞の細胞外基質である腎糸球体基底膜(GBM)の変化との関連を検討した。 2.方法:ラットに抗ラットGBM抗体、抗Fx1A、抗胸線細胞抗体を各々静注し馬杉腎炎、passive Heymann腎炎、抗胸線細胞抗体腎炎を作成した。腎炎3日、7日後と正常ラットの腎組織をパラフィン包埋後切片上でウサギ抗TRI抗体、抗TRII抗体を用いperoxidaseによる免疫電顕法にて糸球体上皮細胞におけるTRI、IIの発現とGBM変化を観察した。 3.結果:正常では糸球体上皮細胞表面にTRIの発現は認めず、TRIIはごく一部に認めるのみであった。馬杉腎炎、passive Heymann腎炎3日後では上皮細胞TRの発現変化とGBM変化をほとんど認めなかったが、7日後ではTRI、IIの有意な発現増加を認めGBM変化を伴った。抗胸線細胞抗体腎炎では3日後で上皮細胞TRI、IIの有意な発現を認めたが、7日後にはTRIIの発現は正常レベルとなり、いずれの時点でもGBM変化は伴わなかった。 4.結論:馬杉腎炎、passive Heymann腎炎での糸球体上皮細胞はTRI、IIを同時持続発現し細胞外基質(GBM)の変化に関与する事が示唆され、馬杉腎炎由来の半月体形成性腎炎における半月体線維化での糸球体上皮細胞の関与が考慮された。また抗胸線細胞抗体腎炎では、糸球体係蹄壁の伸展により一過性にTRI、IIが発現されたと考えられた。
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