研究概要 |
アンジオテンシノーゲン遺伝子欠損(Atg^<-/->)マウスの腎において神経型一酸化窒素合成酵素(N-N0S)活性陽性緻密斑細胞数および腎皮質N-N0S mRNA発現は野生型の各々約6倍,2.6倍に増加していた.また,レニン免疫陽性領域およびレニンmRNAレベルは野生型の各々約23倍,7.9倍に亢進していた.Atg^<-/->マウスのレニンmRNA発現はN-N0S特異的阻害薬である7-nitroindazoleにより有意に減少した.4% NaCl含有餌を用いて2週間の食塩負荷を行ったところ,Atg^<-/->マウスの傍糸球体装置におけるN-N0Sおよびレニンの発現はタンパクならびにmRNAレベルで減少した.一方,0.04%NaCl餌による塩分制限を行うとN-N0Sおよびレニンの発現は増加する傾向を示したが有意な変化はみられなかった.野生型マウスではこれらの酵素発現は塩分摂取量と逆相関して変化したが,その変化量はAtg^<-/->マウスと比較してわずかであった.Atg^<-1->マウスは塩分摂取量と並行して体重が有意に変化したが,野生型マウスの体重は一定に保たれた.代謝実験を行ったところ,Atg^<-/->マウスは多尿,低浸透圧尿を呈し,水制限時の尿濃縮力障害がみられた.ただし,クレアチニンクリアランス,尿中NaおよびK排泄量は野生型と差がみられなかった.また,Atg^<-/->マウスはアルドステロンおよびバソプレシン血中濃度・尿中排泄量の各々有意な低下および上昇が認められた.本研究により緻密斑におけるNOの産生の増加がAtg^<-/->マウスのレニン過剰発現に関与していることが示唆された。また,レニン産生はアンジオテンシンIIによる負のフィードバック機構が存在しない条件下においても塩分摂取量の変化により調節されることが明らかとなり,その機構に緻密斑N-N0Sが関与している可能性が示された.Atg^<-/->マウスにおける水・ナトリウム維持機構の障害が緻密斑N-N0S過剰発現に関与している可能性があり,現在さらに検討中である.
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