研究概要 |
a)上皮細胞でのWT1発現の意義の検討 WT1蛋白は正常糸球体上皮細胞において、成熟過程S字期から核内に存在が確認され、この時期に一致して細胞分裂像が観察されない。継代培養されている糸球体上皮細胞ではWT1蛋白の存在が認められない。しかしmRNAの存在は認められWT1遺伝子アンチセンスを導入すると細胞増殖促進効果が観察された。単離した糸球体を培養すると、WT1蛋白陽性、陰性両上皮細胞の発育が認められた。しかし、徐々に陰性の上皮細胞数が増加していった。したがってWT1蛋白存在と細胞増殖とし関係、時にcyclin-CDK系はさらに検討が必要である。 b)糸球体上皮細胞の細胞周期の解析 PAN腎症において,PCNAとBrdU陽性の糸球体上皮細胞数を比較した。またメサンギウム増殖性腎炎モデルでのメサンギウム細胞も同様に検討した。メンサギウム増殖腎炎において、メサンギウム増殖期である7日において,明らかにBrdU陽性細胞がPCNA陽性細胞より多い。PAN腎症では,逆にPCNA陽性細胞が,BrdU陽性細胞より多いことが示された。以上から糸球体上皮細胞は,増殖刺激下でも細胞周期G1後期に多くが存在する可能性が示唆された。細胞周期のG1からS期への移行を抑制しているCKlファミリーにはp21、あるいはp27などが知られ、糸球体上皮細胞のp27陽性細胞数は、FGF2投与による変化は観察されなかっが、p21陽性糸球体上皮細胞はPAN腎症で増加が観察された。多核あるは2核となった糸球体上皮細胞は、FGF2投与により増加した。したがってS期への進行し次いでM期に入った糸球体上皮細胞の増加が示唆された。これはp21の発現細胞数の低下に関連していると推測され,今後の検討が必要である。
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