高脂血症患者の末梢循環障害はLDL-アフェレ-シスにより速やかに改善する。酸化LDLはex vivoで内皮依存性血管拡張反応(EDR)を阻害することから、酸化LDLのLDL-アフェレ-シスによる除去によって血管内皮機能が改善し得るかどうかをまず検討した。高脂血症患者のLDL-アフェレ-シス前後でstrain gauge plethysmographyを用い前腕血管内皮機能を評価し、血漿酸化LDL濃度、一酸化窒素代謝物(NOx)産生量との関係を調べた。LDL-アフェレ-シスはEDRを著明に改善させた。EDR改善度と血漿酸化LDL低下度、前腕NOx産生量(p<.01)とに有意な相関を認めた。この事実は血管構築が変化する以前に酸化LDLそのものが血管内皮からのNO産生を抑制することにより内皮機能障害をもたらす可能性を示唆する。ネフローゼ症候群においても高率に高脂血症が合併することが知られているが、この血中脂質の増加は血管内皮傷害をもたらすばかりでなく糸球体傷害を増悪させることが示唆されており、ネフローゼ症候群に伴う二次性高脂血症においても家族性高脂血症同様血管内皮機能異常をきたす可能性がある。そこで、今回高脂血症を伴ったネフローゼ症候群患者においてLDL-アフェレ-シス前後の血管内皮機能を、反応性充血時の血流増加によるEDRを高解像度超音波診断装置により非侵襲的に評価した。結果は薬理学的アゴニスト刺激の場合と異なり、血中脂質は低下したにも関わらず生理的血管拡張反応の改善は見られなかった。その理由として、酸化LDLによりもたらされる内皮機能異常のシグナル伝達の違い、或いはネフローゼに対するステロイド治療による強い内皮機能抑制又は修飾などが考えられた。
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