ICGが近赤外部に特異的な吸収を持つため、肝血流の測定等に応用されていることに着目し、ICG投与後に皮膚上より肝臓組織の近赤外スペクトルの経時的変化を測定し、肝臓でのICG取込みおよび排泄の速度定数を算出し、従来の取り込み機能だけでなく、排泄能も含めた臨床的肝機能の指標と成り得るか評価した。 1) 皮膚上より特異的に肝臓組織のスペクトルが測定可能であるか基礎的な評価を行うため、まず新生仔豚の頭部を用い、内径動脈と外形動脈からそれぞれICG投与後の脳臓組織スペクトルを多ポイント化によって測定した。即ち光源に近い受光部からの光をreferanceとして受光部から遠い光の吸光スペクトルを測定した結果、皮膚上より特異的に脳組織スペクトルが測定可能であり、肝組織測定に応用可能であることを証明した。 2) ICGの投与後の増加減衰曲線からfirst order kineticsのone compartment modelを用い、肝[ICG](t)=-A・exp(-αt)+B・exp(-βt)にて解析を行い、増加相(α)と減少相(β)の速度定数を算出した。増加相は肝細胞への取込みを、減少相は胆汁への分泌を示し、これによって肝機能を取込みと分泌能に分けて評価することが可能となる。 3) 臨床的評価として、低出生体重児におけるサイトメガロウイルス感染症などによる肝機能不全の5例において、経時的にICG肝機能検査と同時に、季肋下皮膚上より肝組織のスペクトル測定を行った。この結果、ICGの血漿消失率と肝でのICGの増加相の速度定数との間に正の相関が認められたが、減少相の速度定数との間には相関がなかった。しかし肝機能の改善とともに減少相の速度定数は増加した。肝でのICGのクリアランスをICGの取込みと、分泌の2過程に分けて評価することができ、包括的な肝機能検査としての可能性が示唆された。
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