今回好中球減少性新生児細菌感染症の病態生理及び治療方法について平成9年度科学研究費を用いて検討を続けており今までに次のような結論を得た。 まず、好中球数に最も影響を与える因子であるG-CSFに注目し、細菌感染症における血中G-CSF濃度の測定及び検討をおこなった。その結果、細菌感染症すべての症例で血中G-CSF濃度は上昇しており、特に好中球減少性細菌感染症では非好中球減少性細菌感染症に比し上昇していた。また、近年好中球減少性新生児細菌感染症に対し外因性G-CSFの投与が試みられており、その効果について論じられている。我々は外因性G-CSFを投与した症例の血中G-CSF濃度の推移と好中球数の変化を検討した。外因性G-CSF投与前の血中G-CSF濃度が10^5pg/ml以上を呈している症例は、外因性G-CSF投与後も血中G-CSF濃度は上昇せず、好中球数の上昇も認められなかった。これらのことより、未熟児新生児好中球減少性細菌感染症における血中G-CSF濃度の上昇には1989年にWatariらが報告したようなフィードバック機構が関与している可能性が示唆された。そこで、未熟児新生児期は成人に比しG-CSFレセプターの数が少ないか或いはリカンドに対する親和性が低いのではないかと考え、核医学を用いたG-CSFレセプターの測定を開始している。現在、統計学的有意差を認めるまでの検査結果を得ることができていないが、在胎週数が若いほどG-CSFレセプターの発現は少ない傾向を認めた。今後、どのような症例に特にG-CSFレセプターの発現が少ないのか更に研究を続けていく。
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