研究概要 |
胃癌とEpstein-Barr virusとの関連性に関して、今年度新たに得られた研究成果を以下に示す。 1.EBV関連胃癌症例の臨床的特徴:EBV関連胃癌は全胃癌の4.9%を占め、男性に多く、胃上部で限局隆起型が多いことを示してきた。今回残胃癌での検討を行った結果、30%もの症例でEBVが腫瘍細胞内に検出され、通常型胃癌に比較すると有意にEBV検出率が高く、胃酸濃度の低下がEBVの易感染性を生じる可能性が示唆された。 2.抗EBV抗体価の測定および腫瘍マーカーとしての意義:EBV関連胃癌患者では血清中の抗viral capsid antigen(VCA)-IgG、抗early antigen(EA)-IgG、抗EBNA抗体価が上昇していた。特に抗EA-IgGの上昇が特徴的であり、cut off価を20倍未満とするとsensitivity 80.0%、specificity 100.0%と特異性が非常に高く腫瘍マーカーとして臨床応用可能と思われた。抗VCA-IgM,IgA,抗EA-IgAは全例10倍以下であり抗体価測定の意義は認められず、リンパ上皮腫型鼻咽頭癌(IgAタイプが上昇)とは異なる抗体価パターンを呈していた。今後、大腸癌、悪性リンパ腫、白血病、慢性活動性EBウイルス感染症、膠原病などの症例との比較を行う予定である。 3.bcl-2癌遺伝子の発現:EBV関連胃癌でアポトーシスを抑制するbcl-2の発現を示す症例がみられたが頻度は少なく、特異性は認められなかった。 4.湿潤リンパ球のT細胞受容体の解析およびEBV関連胃癌患者のHLAタイピング:症例が少なく不十分であった。 5.EBV lytic cycleの検索:諸検査にてもEBV virus産生性増殖を示す所見は得られなかった。 6.EBV関連胃癌のcell line作成の試み:現在まで数例試みたが成功していない。 以上が本年度の成果であるが、今後も研究を継続していく方針である。
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