研究概要 |
胃癌とEpstein-Barr virusとの関連性に関して、今年度新たに得られた研究成果を以下に示す。 1. 胃癌患者における抗EBV抗体価測定の臨床的意義:81例の胃癌患者に対して、間接蛍光抗体法により抗viral apsid antigen(VCA)-IgG,IgM,IgA,抗early antigen(EA)-IgG,IgA,抗EBV nuclear antigen(EBNA)を測定した。その結果、EBV関連胃癌症例は81例中6例(7.4%)であり、抗VCA-IgG,EA-IaG,EBNA抗体価の増加が認められた。特に抗EA-IgG抗体価の上昇が特徴的で、cut off値を10倍未満とするとsensitivity 83.3%,specificity 90.7%と特異性が極めて高く、腫瘍マーカーとして臨床応用が可能と思われた。一方、抗VCA-IgM,IgA,抗EA-IgAはすべて10倍以下であり抗体価測定の意義は認められなかった。 2. EBV lytic cycleの検索:EBV関連胃癌患者では抗early antigen IgGが増加していることからEBV産生性増殖の可能性が示唆されたが、諸検査にてもその所見は得られなかった。 3. 残胃癌でのEBV検出率:残胃癌では10例中3例(30.0%)もの高頻度でEBVが検出され、胃酸濃度の低下とEBVの易感染性の関連が示唆された。 4. 浸潤リンパ球のT細胞受容体の解析およびEBV関連胃癌患者でのHLAタイピング:症例が少なく不十分であった。 5. EBV関連胃癌のcell line作成の試み:現在まで数例試みたが成功していない。 以上が本年度の成果であるが、今後も研究を継続していく方針である。
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