Palmaz stent(P294)に3cm長の極薄ポリエステル膜を、7-0ナイロンにて輪状に縫着しcovered stent(CS)を作成した。次にこのCSを直径6mmのPTA用バルーンカテーテルに装着し、次に述べる経皮的挿入のために8Frのシース内に納めた。 全身麻酔下にminiture pig(n=8)の両側大腿動脈を経皮的に穿刺しガイドワイヤーおよび9Frのシースを挿入した。レントゲン透視下にガイドワイヤーを大動脈分岐部近傍の腸骨動脈に進め、同部を8mmPTAballoonにて3回過伸展させることにより内皮細胞を傷害し、内膜過形成モデルを作成した。 一側腸骨動脈には先に作成したCSを透視下に挿入し、ステントの装着してあるバルーンカテーテルはそのままに、8Frの外套のみ引き抜いた。次いでPTAバルーンを拡張させ、CSを障害部に留置した。対側腸骨動脈には被覆されていないPalmaz stentを留置し対照とした。ステント留置術は全例成功した。 ステント留置術後3日目に動物を犠牲死させ、両側腸骨動脈を採取した。標本を縦割りし一方は免疫組織学的検討に、他方は走査型電子顕微鏡に供えた。免疫組織学的検討では、抗PC、NA抗体を用いて単位面積当たりの増殖期にある中膜平滑筋細胞数を計測した。その結果、CS側の中膜平滑筋細胞の増殖率は7.5±5%と対照側の12.4±6%に比して低い傾向にあった。一方、走査型電子顕微鏡による検索では、血小板の付着凝集している面積比率をもとめたが、その結果、CS側では20±8%と対照側の55±12%に比して有意に低かった。(p<0.05)。 これまでの実験で、CSはステント留置部における血小板凝集を抑制し、その結果中膜平滑筋細胞の増殖を抑制している可能性が示唆された。来年度は慢性実験を施行し、実際にステント閉塞の原因となる内膜過形成が予防されるか否かを検討する予定である。
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