研究概要 |
本研究では,分子生物学的アプローチにより,乳癌の遺伝子レベルでの悪性度診断を臨床応用可能な段階で為し得ることを目的としている.先ず,乳癌の発生・進展に重要と考えられる各染色体(1p,3p,6q,8p,9p,9q,11p,11q,13q,16q,17p,17q,18q,22q)における詳細な欠失地図を作製し,各染色体領域ごとに高頻度な欠失を検出するDNAマーカーを同定した.結果,計24ヶ所の染色体領域から計33個のDNAマーカーを選定した.これらの各染色体領域には乳癌の進展に関わる癌抑制遺伝子の存在が示唆され,各領域の欠失状況を調べることで,乳癌の悪性度診断を可能ならしめると考えられた.以下,本研究で選定した各染色体欠失領域とDNAマーカーを列挙する.1p36:S1612,1p34-35:S552,1p21-22:S551,3p25.1:S1286,3p14.3-21.1:S1295・S1547,6q23-25:S1007・S1035,6q26-27:S503,8p21-22:S1106・S136,9p21-22:S157・S736,9q22.3-31:S287・S176,11p15:S922・S1318,11p11:S1313,11q22:S1986,11q23-24:S1998,13q12:S171,13q14:S270,16q22.2:S515,16q24.3:S413,17p13.3:S849・S926,17p13.1:TP53,17q21.1:S934・S791,18q21.1:S450・S474,22q12:S689,22q13:S272. 現在,術後再発し,死の転機をとった約100症例(死亡群)及び対照群として術後5年以上無再発生存をしている約100症例(生存群)について,上記により同定した各DNAマーカーごとに欠失の有無を調べている.各DNAマーカーごとに死亡群と生存群における染色体欠失の頻度を比較検討し,多変量解析することで,乳癌の予後と密接に関わる遺伝的変化を特定せしめると考えている.
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