本研究により、日本白色ウサギを用いた動静脈を対とした同種血管束の移植の研究により、secondary vascularized flap(二次的に血行を持たせた皮弁)の作成が、可能であることが証明された。 昨年の学会では、以下の知見が得られた。初回手術から2週間目で作成した皮弁を移植した血管束のみで挙上し、再び元の場所に移植する。その後1週間、皮弁の血流が良好であること、移植した皮弁が完全生着することが観察され、同種血管束と皮弁の皮下血管網との間で血管新生が生じ、これが皮弁として移植しうるだけのviabilityを持つことが証明された。また、micro-angiographyにより、血管束から皮弁内への造影剤の移行が観察され、この間に血行が存在していることが示唆された。 今年度は、同種血管束と皮弁血管網との間で生ずる血管新生について、樹脂鋳型標本を用いた走査電子顕微鏡による観察を行った。初回手術の翌日では、血管束内の動静脈共に血管内膜の状態は良好で、周囲の小血管さらに、20〜30ミクロン程度の毛細血管にいたるまで開存を観察することが可能であった。さらに、毛細血管レベルにおいては一部で血管芽の発育が観察された。術後2日目では、さらに、その新生血管は分枝状に分かれて成長する事が分かったが、皮弁内の血管は観察できなかった。術後3日目では、血管束の動静脈、周囲の小血管とともに、成長した毛細血管を通して、皮弁内の血管が観察された。吻合した血管は一部で、太くなっており、これは毛細血管の吻合が起こり、そこに新たに血流が生ずると血管径が急速に太くなることを示す。これらの所見の一部は、血管新生についての過去の報告に見られるが、今回新たに冷凍同種血管からも同様の血管新生課程が起こることが、解明された。(第6回日本形成外科学会基礎学術集会にて発表)
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