1、 同種異系血管束を用いた皮弁の作成について 昨年までは、日本白色うさぎの同種冷凍血管束を用いて、新たなる血行を持たせた皮弁、いわゆるSecondary vascularized flapの作成が可能であることを証明してきた。今年はさらに、日本白色種とニュージーランド種の同種異系を用いたモデルについて同種血管束移植の可能性を検討した。免疫抑制剤としてFK506を1mg/kg/day使用した。今回の実験では、血管束移植後最大7日目まで血管の開存が確認できた。しかし、2週間目皮弁挙上時での血管の開存は得られず、皮弁は全例壊死に陥った。血管の閉塞の原因として、吻合部の血栓移植組織の感染等が考えられた。今後さらに冷凍保存手技、免疫抑制剤の使用量の検討等が必要と考えられる。 今後は、同モデルを用いて、冷凍保存手技の向上、併用薬剤の工夫等により生着率の向上を行う。 2、 同種血管束により作成した皮弁の立体的血管構築の観察 我々は、現在まで、Secondary vascularized flapの血管構築につき静脈相も含めた経時的変化について報告してきた。今回は、皮弁の血管構築の立体的観察をラテックスゴム注入による鋳型標本を用いてを行った。血管束基部においては、中心に太い動静脈が通り周囲には毛細血管網が存在していた。血管束動脈から分枝した動脈は、皮弁内動脈へ直接連絡していた。皮弁内動脈には、拡張・蛇行といった形態変化の他に、皮弁長軸方向への配列変化を起こしていた。皮弁内の静脈は皮弁遠位部では細いが、血管束を中心として次第に太く集合し血管束静脈に連絡していた。皮弁内の動静脈は互いに立体的に交差しあう構造を示し血管束動静脈に収束していた。これらの所見は通常の有茎皮弁(いわゆるaxial pattern flap)に近い所見と思われる。
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