研究概要 |
熱傷という生体にとっての侵襲が続発する感染症に対して防御的に作用している機序に関しての検討を行った。 1) ICR系マウス背部に20%、3度熱傷を作成し、(1)熱傷単独群、(2)熱傷24時間後にE.coIi 3×10^9(感染症)を腹腔内投与した群、(3)E.coli 3×10^8単独群を設けてその生存率について検討した。結果、熱傷単独群では100%生存、熱傷+感染症群では40%生存、感染症単独群では2日以内に100%死亡した。すなわち、熱傷侵襲反応にて生体内で産生される何らかの物質が感染防御的に作用していると考えられるため、その検討を行った。 2) Thyl,2は熱傷単独群で21.2±8.6、熱傷後感染症群で18.4±11.9、感染症単独群で11.1±12.2であり、Lyはそれぞれ36.4±8、、40.7±11.2、56.3±13.6、L3/T4はそれぞれ26.5±13.3、30.3±15.2、38.9±12.1、Ly2はそれぞれ9.5±0.3、10.1±0.4、7.3±0.1であった。顆粒球/リンパ球比率は感染症単独群において有意に高値であった。これらより感染症単独群における免疫能の低下が示唆された。 3) IL-1,IL-6値は熱傷後感染症群が有意に高値を呈していた。したがって炎症反応はいずれの群よりも高い傾向にあった。 4) 免疫系に大きな影響を及ぼすIL-10,IL-12は熱傷後感染症群が有意に高値を呈していた。以上のことより、熱傷刺激は免疫系に影響を及ぼすサイトカインの動員を促し、それがその後の感染症病態に防御的に作用しているものと解された。
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